映画を教えてくれた場所〜広島の観光名所シリーズ④〜

今回はかつて、映画館があった場所へ行ってきました。

 

サロンシネマ

 

広島の映画好きなら知らない人はいない名所です。広島市中区の鷹野橋商店街を少しだけ外れたところ。鷹野橋商店街は広島ではもうすっかり無くなりつつある“アーケード商店街”です。昭和の風情が残る商店街の佇まいは中心市街地の空洞化をはっきりと教えてくれるのと同時に人の温もりで商店が成り立っていたあの時代を懐かしく思わせてくれます。

そんな商店街からほんの少し外れたところにある歴史を感じるビル・・時代に寄り添うことを拒否したかのような佇まい。そこにサロンシネマはありました。現在でもサロンシネマは存在していて、広島の街の中心に移転をしています。ですが、鷹野橋商店街にあったサロンシネマは今でも行きたくなる広島の素敵な場所だと思っています。

 

ここは映画館と建物が時代に“合わせる”ということがなかったために、映画作品を時代の服を纏うことから救っていたのではないかと思っているのです。誰もが時代の空気に逆らう事が出来ない。そんな中で時代に抗うのは明らかに変人として扱われる。サロンシネマはそれを敢えて地で行っていたのではないか-だから普遍的な作品が数多く上映されていたのではないかと思うのです。

サロンシネマは階段を登って3階にありました。今時わざわざ階段で3階まで登るという事自体が無くなっています。エレベーターもないので階段を登る以外に映画を観る手段はありません。そのアナログさがこの映画館の魅力でした。映画館は作品を観に行く場所なのですが、ここは映画館を楽しみに行く場所でした。

 

ハードやインフラが幅を利かす時代はすでに終わっていて、ハードは当たり前でコンテンツこそが面白さのすべてといった現代社会において、サロンシネマはここでも時代に取り残されながら映画館自体の魅力を発していました。映画は上映されていなくとも、この何かを忘れてきてような風景にたまに会いたくなります。

きっと自分自身がここに何かを忘れてきているのではないかといつも思います。